暗きより暗き道にぞ入りぬべき
        はるかに照らせ山の端の月
   

 月の文字が入った詩歌をあてずっぽに探していたとき、ドキッとさせられた歌です。平安期の女流歌人和泉式部さんで、浄土信仰が盛んだった時代に仏様に救いを求めたり、あの人が恋しいなどと女々しいことがなく、決然としたゴーイング・マイ・ウエイ。自立した現代女性の鏡のような歌と感じたのです。
 月を観ても無視。山の端に追いやったごとくです。月を禅家のごとく悟りの世界観を象徴するのでもなく、詩歌での恋愛の心情表現も根っから否定をしているように思えるのです。平安時代の前衛作家、飛んでる女だったのでしょう。
 式部の彫像写真を見ますと、お年は不明ですが目鼻立ちのスッキリした二重まぶたで、ふっくらとしたいい女。しかし、同姓からはイヤミな女といわれそうだ。かような女性とおちかずきになりたいなー、と思いつつも、太刀打ちできそうもないなー。
 男を愛し肉欲を楽しみながら、毅然とした生涯のようでした。「たすけてー。」などとけっして女のコビを売らない、まさに男勝りの女性だったのでしょう。
対照として小野小町のそそとした、女こころの句をひとつ。

思いつつぬればや人のみえつらむ
      夢としりせばさめざらましを

比岸より彼岸・・ようやく渡った橋の先が桃源郷とは限らない

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和泉式部

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