大殿は固く唇をかんでおりましたが、時々気味悪くお笑いになって、燃え盛る車と、良秀を見ていたのでございます。
大殿の端麗なお顔が鬼・夜叉のごとく見えたのは、きっと燃え盛る炎のせいだったのでしょう。
 自分が望んだ常軌を逸した光景だとはいへ、良秀の醜い顔は一層、ひずみ・ゆがみ地獄の悪鬼そのものでした。
しかし、車が最後の大火を上げるころは、最前なの苦しみは嘘のようになり、カッ ! と観さだめた良秀の顔は、恍惚とした喜びに満ち、輝きすら発してきたのでございます。

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