厄病神が住んでいる古びた屋敷は、昔はそれなりに面目をもっていた庄屋だったのでございます。村は飢饉が続いたうえに、一人息子が亡くなっていらい庄屋さんはすっかりやる気を失い、気がほうけたようになってしまったのです。

人気の失った屋敷は、活力が失せ、 暗く埃のにおいがただよっております
閉め切られた奥座敷にどっかりと座った疫病神。
ぶつぶついいながら濡れた計画帳をひろげております。
くそ! 福の神のやろう。オレはあんないいかげんなヤツと違うんだ。あいつの仕事は「棚からぼた餅」的な気まぐれですむが、オレの仕事はしっかり段取りを整えておかなくちゃ。
なんせ、人間テーのは、テメーがしでかしたことが都合悪くなると厄病神のせいだとヌカシャーガル。
正直言ってオレには人間どもに悪さをするほどのパワーなんかありゃーしねー。
人間どもの不始末を調べ上げて、係りの神さんに報告するのが主の仕事だ。
オレ一人でやれることといったら、博打のツキをおとしたり、親不孝者や不信心者にお灸をすえる程度だ。しょせん欲張りで馬鹿な人間をチョットこらしめるだけだ。
 寄り合いに顔を出せば大明神連中の使いぱしり並だし。
連中ときたら何もしないくせに書類が不備だとか、挨拶がなかったとか、難癖ばかりつけ、現場の事なんかなんにもわかっていねー。知ろうともしねー。
かといってハンコ一つ欠いてもなんにもできねー。

なんといっても机上計画最優先。書類最優先だからなー。」
前年度の計画と結果報告はどうであったか。とにじんだ文字との戦いは不眠不休の連日でした。
計画書の修正に厄病神の大きな目は赤くはれ上がり、目やに・鼻くそとやつれきった様は、かわいそうなくらいです

前ページ   次ページ   

目次

inserted by FC2 system