　かたや福の神は、続く豊作にお供え物かどっさりあがり、ますます大きくなっていきました。
お供え物があがるのはうれしかったのですが、なにやら“ねがいごど’が多くなってきたのには面食らったようです。

　家内安全　お家繁盛　大願成就　五穀豊饒祈願などはまいどのこと。
“機織と針仕事が上手になるように”アカギレの手でやっと書いたと思われるものなどは、かわいらしいのですが、“とみくじ　に当たるように・お宝ちょうだい・嫁っこほしい”と下手な字で書かれたものなどむしがいい。
まだしも“子供がさずかるように・子供の虫がおきないように・顔がよくなりますように”などなどはゆるされるが、いずれも福の神にしたらお門違いといいますか管轄違い。
“ワシニャーそんなこと　できないけどナ’とまったくやる気なしで、
気楽に過ごしていた福の神でした。

゛ねがい゛がかなわなければ、村の衆もこない。来なければお供え物もない。
福の神も村の衆もようやくこの因果関係に、ようやくきずいたのでございます。
とわいっても、「家宝は寝て待て。棚からぼた餅」の福の神。自分から厄除け呪文の一つでも覚えようとは思ってもみませんでした。

「厄病神どんにはすまないが“厄事計画帳”が無くなると、お供え物がどっさりなんだけどな｡だからといって、ほこらを燃やすのもナンだしナー。うまくいってくれればいいんだけれど・・・」

特別な思案があったわけではないンですが、３．４年たちますと焚き火などの不始末などからほこらが燃えることがありました。

その度に厄病神が死ぬような思いの日々を過ごし、かたや村は何事も無く過ぎていったのでございます。

「厄病神が村に入ってくるのを、福の神様は祠に火をつけて村を守ってくれているかもしれネー。ありがて－ことじゃ－ネーかい」「オラもそう思うジ。なんたって新しく祠を建てたその年にゃ豊作だでヨ」
「そんなら、毎年ほこらを燃やして、建てなおしていったらどうズラ」
「そりゃ－いい考えだ。どうだい三九郎の１月15日にしたらどうズラ。
なんたって、近在一の“福の神様”だで、
立派なほこら建てて､お迎えしなきゃ－なんね－ズラ」

　人はあまりにも落ち込んでしまうと、逆に“神頼み”はしなくなってしまうものですが、少し良くなってくると欲がでてまいりますから、急に“神様神様”となりまして・・・。　

村の衆も“ほこら”は毎年新しく作り、“おそなえもの”を欠かさないようにすれば、福の神様が住んでくれると思い出したのも自然な成り行きでございましょう。　　　　　　゛