小春日和の陽だまりは
枯葉がふんわりとつもり、
居眠りを楽しんでいた
福の神は、雷のような声
にたたき起こされました。
「やーー福の神、ひさしぶ
りだなー。あいもかわらず
ショゲタ面をしていやがる。
ちったー何かやったらどうだ。といっても、テメーのやることターなんもネーけどヨ。」
われるような大声と、太鼓を打ち鳴らしたような大笑いの主は、落ちぶれた庄屋の屋敷に住んでおります厄病神でございます。
金襴緞子のお相撲さんの化粧回しを寄せ集めたような、キンキラ・派手派手をきこんでおります。
お顔ときては、鬼瓦を化粧したごとく、ギラギラしたでっかい目玉に、毛虫が数十匹たむろしているような眉毛。鼻はでっかい団子を三つほどあわせたかんじです。ついでに、鼻毛がブラッシのごとくでています。口は分厚く精力的。
「ワシャー仲間の寄り合いで、出雲の邦にいかにゃーナラネー。
留守のあいだ、いつものようにこいつを預かってくれ」
「いいか。中身を見たらしょうちしねーゾ」
「トトトトッとんでもありません。厄病神さんの
大切なものをみるなんて。それにしても、毎年、
出雲の邦にいかれるなんて、うらやましいこと
です。わたしなんぞずーとむかしのことで・・・。
だいいち旅行代がありません。」
「オレ様の留守のあいだしっかり村を見張って
いるんだぞ。といってもあんたの出番はネーけ
どヨ。
マーなんかのたしにはなるズラ。」
厄病神はでっかい鼻をさらに膨らませ、蒸気
機関車のごとく鼻息をふきだし、地響きをたて
ながら旅立っていたのでございます。