厄病神の背中をすきま風がさすと、ふと福の神のことを

思い出しました。
「どうしようもねえヤツだが、祠がなくなっ

ちまってどおしているんだ・・・。

まてまてあいつの心配なんかしているほど時間がねえンだ」

思いを振り切るように、首を振り厄事計画書の作成にとりか

かたのですが“エーもうしょうがネー”と立ち上がったのでござ
います。

「オイ!福の神いるか。デテコイッ!」

木枯らしなど吹き飛ばしてしまいそうな大声に、福の神は弾

き出されたように枯れ草の塊の中から、ちっちゃな目をありったけ開いています。

「どどどどうしたんです!わわわたしはなんにもしてませんけど、

たたたたすけてください。」

それだけいうと、空気の抜けた風船のようにへなへなと座り込んでしまいました。

「腰抜かすこたあねえじゃねえか。べつにおまえさんを取って食おうなんていうんじゃね−。

この寒空にどうしているかと思って心配、イヤそうでもネーんだが、

ちゃんと仕事をしているか見に来たんだ。それにしてもオメー枯ればに
くるまっているなんて

まるで冬眠中のネズミだぜ。

あいつらのほうが穴蔵に入ってる
からまだましだ。」

 「えっ!そそそそうなんです。祠が燃えたあと村の衆はなんもしてくれませんで。

てもとても仕事どころではございません。

しもやけ・あかぎれ・はらいた・栄養失調
と、も−ひどいもんでございます」

厄病神が仕返しに来だのではないとわかると、とたん
に元気になった福の神でした。

 「まあいい。村の衆も新しい祠を作ってくるようだから、それまでオレのいる与太郎の家にこい。

枯れ葉にくるまっているよりは増しだ。ついてこい!

と有無をいわさない男気でございます。

福の神も特に異存もなく「疫病神さんと暮らせるなんてここち強いです。ヘーありがとうございます」

疫病神のあとを、丸々とした体でちょこまかちょこまかと踊るようについてゆく福の神でした。

 

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