お話は定番の--福の神と貧乏神--みたいなんですけど、信州の伝統行事に面白いものがありまして変わった神社がございます。

御信心のありようは時代とともに変わってゆくものですが、「こまったときの神頼み」という思いは今も昔も変わらないもので、お願いの数だけ神様がおいでになるほどです。
それも、茶断ち・塩断ちをしての願掛けや、受験勉強を必死にした上のお願いともなれば、神様もお情けをかけてくれるというもの。
 しかし、「宝くじかあたりますように」とか「財産が転げ込んでくるように」「株が上がりますように」「コンピューターミスで金が振り込まれますように」「もてますように」という「ナニナニのように」なんて虫のいいお願いは神様だってつきあいきれません。
 
 時として、これがまた「大当たり」なんてーことがあります。
まったく付き合いのなかった親戚筋から遺産が転げ込んだり、ついでに寄った神社に、わずかな賽銭をあげて祈った宝くじがあたったりします。
これはモー神様のおかげだと、にわかに信心深くなってしまうものです。
 
 最初のうちは「神頼み」をしたなどと言いませんが、人は元来黙っていられないもので「あそこの神社にお願いしたら、願いがかなったゼ
」「この神様はオレの守り神だ」なんていいだすものです。
すると、神社側も大々的に宣伝をいたしまして、評判になる。
「シマッタッ。オレの分が減ってしまう」なんて、まことに罰当たりな了見もでてこようというもの。
なにはともあれ、一番神様のご利益に預かるのが神社さんでございまして、繁盛している神社に出向く のは群集心理とともに、人々の信頼・安心願望なのでございましょう。

お話の舞台は、信州にある大層繁盛している神社でして、暮れから正月にかけては大変な交通渋滞になってしまうところです。
「この世は天国。オレタチのものよ」とばかり、頭のてっぺんからつま先までバラバラなスタイルの若者がおしかけます。あたりかまわず大声で携帯電話をかけまくっています。
どう見ても神様とは無縁と思えるのですが、腹のうち、心の内はわかりません。
さぞや、お悩み多きお年なのでございましょう。
顔黒ならぬ紅白に塗りたくった<、オネーサンのモジャモジャ頭に、おみくじが結ばれていました。
お若い方のお悩みを聞くのも面白そうですが、この神社がどうしてこんなに繁盛するのか、その秘訣を探ってみたくなったのでございます。

 表看板には神力全開総願望即決成就・驚異的現世利益達成・一願万益所得倍満
10年20年先の成就でなく、ポンポンと手を合わせ振り向いたとたん、目的達成、悩み解消ということなんでございます。
ハイテク・インスタント・IT神社がセイリングポイントなのでございます。
スピード宝くじも・パチンコも顔負けの、スーパー神様のお名前となると、参拝者は誰もご存じない。
「そんなことドーでもいーじゃン。皆来るからこなきゃーかっこわるいじゃン。」
「ここの神社サー、メールでイケルモンネ」と、やけに粘っこいお声でこたえてくれました。
 なんと言ってもこの神社が有名になったのは、なんとコンピューター占いで宝くじの当選番号を当てたことに始まります。
それからというもの、宝くじフアンから絶対的な支持を得て、とうとお「宝くじ大明神」まで出現したとかで、そりゃーモー大変なことでございます。
ならばと境内に宝くじ売り場を開設すれば、これまた大当たり。
売り上げが伸びれば、当選率も上がるのは当然のこと。ほくほく顔になったのは神社さんで、お話を承っているうちに゛ねたみ゛もありまして馬鹿馬鹿しくなってきました。

 「信仰心とはなんぞや」などと、小難しいことを言うつもりはありませんが、いまも昔も゛現世利益・悩み解決゛は教団の基本。神様商売は永遠のヒット商売かもしれませんね。

話はなんだかグチっぽくなってしまいましたが、この神社は山また山の信州の、さらに山奥の寒村だったところでございます。
過去形になっておりますが、高速道のインターができ、人気のなかった山村はリゾート地として、にわかに脚光をあびたのでございます。
昔は難儀をしたであろう峠は、車でアッという間に通り過ぎてしまいます。
お話の神社は国道沿いに位置し、ど派手な旗が並び、パチンコ店の開店祝いか、新車販売店かとかんちがいしそうです。しかし、間違えることはありません。
神社の象徴である鳥居が、あらゆるものより一層高く、キンキラ金と輝いています。
雲形模様が彫られた金箔の扁額は、篆刻文字で「牡丹餅神社」とあります。
「なんだ、パチンコ台みたいじゃン」とおっしゃるかもしれませんが、まったくそのとおりです。
境内全体がパチンコ台のごとくで、自分がパチンコ玉になったような気分になり、あちらこちらぶつかりながら奥の院へと導かれます。
チーンジャラジャラと玉が飛び出してはきませんが、電子掲示板がめまぐるしく点滅をしております。
願掛け成就のお礼参りの報告が、大型TVに映し出され、ありがたいご神託を受ける奥の院は、当然有料でございます。

 まえおきがながくなってしまいました。
昔々と始まったとたん読む気を失ってしまったでしょうが、ことの起こりは昔だからしかたがありません。ただし、宮司さんが言うようなおお昔ではなく、曾爺さんあたり・・・、いや、もうチョット昔のころでしょうか・・・。


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厄病神 VS 福の神

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