　私は辺境の地への単独旅を続けた中で、心身が浄化されるほど、より原始的になっていくことに気がつきました。しかし、感覚が原始的になるということは、幼稚化することや無能化することではなく、根源や本質が体得できるようになっていくことです。
　いつしか、私はかの地への旅を、巡礼だといちずけ、心とはなんだ？、イヤそれより先に生命とは何だ？、という疑問につきあたりました。崇高な精神のありようを表した、曼荼羅世界の解説からは、明快な答えを得ていませんでした。
　しかし、日本の縄文時代に代表される模様や、世界に残る原始美術といわれる世界こそ、生命の根源・こころの根っ子をあらわしているのです。人は純粋であればあるほど、大宇宙と結びついていき、言語から遊離していくものだと感じます。主義や宗教観では無なく、私たち誰でもが感じいながら見ることが出来ない、心や魂を視覚化したともいえます。
　あらゆる生命は「生命体」という元素の絡み方によって、一時（現在）その形をなしているのです。それ故に、あらゆる生命は、過去・未来において結び合っていた、結び合っていくのです。それにきずかせてくれたのは、インドネシアの熱帯雨林帯に暮らす人々であり、辺境に暮らす人々、そして、曼荼羅絵の世界でした。生命体の元素的な形を「人手形」にいきつきましたが、多くの生命が数字的に⑤の構成であることの不思議さは、これからの研究課題です。

　　　　　　１０年間ほどの作品の一部をごらんください。　　ありがとう