おほかたは月をもめでじこれぞこの
 積もれば人の老いとなるもの
  在原業平

 多くの人が月を賛美してきたがもうやめましょう。月齢が積もり積もっていくように年老いていってしまう。と皮肉とも軽いジョークともとれますが「歳月人を待たず」現実社会へと引き戻しています。
 月をテーマとした歌から心のありようを探ってきましたが、禅卿でいう月をつかまえたとしても現実生活が一変するわけでもありません。悟ったからといって超能力者になったり、偉くなったりするわけでもありません.。道元は「悟っても悟らなくても同じように苦しむのだ。みんなが正しい発心をして解脱に向かって、手を取り組んで仲良く修行をしよう」とおしゃっています。悟りの世界を実生活に生かさなくては絵に描いた餅、いや月でしょう。

浮世の月見過しにけり末二年   西鶴

 元禄6年(1693)53歳で没した西鶴の辞世の句。私なんぞは西鶴よりも10年も長く生きているのになにもわからない。むしろ、西鶴の師匠だった宗因の気分で行きたいと願っています。

世の中よ蝶蝶とまれかくもあれ

無心・無想

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